雨が降っても傘いらず 高円寺駅西商店会へようこそ

新シリーズ

こちら高円寺駅西商店会 ~高架下物語~

「星さいか」が高架下を物語形式で紹介する

新シリーズがスタート

 

 

星さいか(歌手・俳優)

ウルトラマンダイナ TPC看護婦サイカ役(MBS)、ウルトラマンガイア XIGオペレーター鵜飼彩香役(準レギュラー)(MBS)、ゴジラTV 世界のゴジラ(木曜日)レギュラー(レポーター)(TX)ほかで活躍中

 

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第8話 新しい風吹く高円寺(HIDE)

 

「あそこじゃないですか!」

スマホのナビを片手に長崎晴海が嬉しそうに指さした。隣を歩くのはカメラマンの木村和香子。

 

 長崎晴海は月刊「ディナランチ」の編集部で働く25歳。カメラマンの木村和香子はこの道10年以上のキャリアを持つ30代後半のベテランカメラマン。「ディナランチ」に欠かせない美味しそうな写真を撮ることのできる女性だが、それを鼻にかけることがないため編集部でも人気がある女性カメラマンである。

 

月刊「ディナランチ」は現在ひそかに20代〜30代女性に人気のある雑誌である。連載中の「今すぐ行きたい隠れ穴場イタリアン」は今まであまり知られていない、女性が入りやすく、美味しくて、手ごろな価格という店を紹介する人気ページ。現在は中央線沿線の各駅の隠れた名店を紹介しているところ。

 

今回、その高円寺編を担当するのが入社2年目の長崎晴海だ。アシスタント業務の下積みから始まった晴海が初めて任された店と味の記事ページの取材である。今回の店は高円寺駅のそばにあるスパゲティの『HIDE』という店。

 

秋のとある昼下がり、晴海は約束の時間に間に合うようにカメラマンの木村と店へと向かっていた。高円寺駅から高架下の脇沿いに続く細い道を進んできたものの、イタリアンレストランがありそうな道には感じられず、晴海はナビを見ながら少々不安になっていたところだった。とそこへ、目的の店は突如として現れた。

 

 

「こんなところに突然あるんですね。意外です」晴海は木村にそう言いながら扉から中へと入った。

 白い!第一印象はおそらく誰もがそうなのではないだろうか。カウンター席があるだけのこじんまりとした店だが、店内は白い壁におおわれ、店全体が白い印象を受ける。壁には一枚の絵、白い壁にとても映えている。白い壁の効果か、店は小さいながらも広々と、そして清潔な印象を与えていた。

 

 

 

「小粋なイタリアンって感じね」木村は撮るのが楽しみという口調で言った。

カウンターの向こうの厨房スペースにいた店長の中西が、イタリアンシェフという装いで二人を出迎えた。

 

「今日はよろしくお願いします」まだ若い男性に見えるが、優しそうな雰囲気と気さくな感じを併せ持っていた。

挨拶を終えた晴海は、早速インタビューに取り掛かった。

 

「なぜ高円寺のこの場所にスパゲティ店を出そうと思ったのですか?」

「高円寺には祖父が住んでいました。私もよく知っている町です。高円寺には飲み屋さんはたくさんありますが、普通に食事ができる店があまりないかなと思ったんです。例えば、女性が仕事帰りにふらっと一人で入って夕飯を食べて帰れる店などがあるといいのではないかと思ったんですよね」中西店長はにこっと笑った。

「なるほど、現在はどういったお客様が多いのですか?」書きとりながら晴海は質問した。

 

「実際には、家族連れのお客様や、会社員の男性の方とか、近所の年配の女性のお客様など、いろいろな年代の人が利用してくれています」

「メニューにはスパゲティとサラダしかありませんが、なぜスパゲティのお店を始めようと思ったのですか?」

 

「私は長い間本格的なイタリアンレストランの店で働いて修業していました。その時にはピザ、スパゲティ、そのほかいろいろなメニューがもちろんありました。その中で、スパゲティは皆様に人気があるメニューで、それなら皆様に喜ばれるスパゲティだけを扱う店にしたいと、そう思ったんです」

 

「私もスパゲティは大好きです。食べやすくて、美味しいですよね。実は和風スパゲティが好きなのですが、こちらのメニューにはないですよね。なぜですか?」HIDEのメニューを見た時から晴海が感じていた疑問だ。

 

「和風味も今後加えていこうと思うのですが、まずはわたしのこだわりのメニューから始めました。クリーム系、ミートソース系、タラコやウニを使ったメニューなどです。それから、お肉はあまり食べないという方々のお声もあり野菜を多くとれるメニューも考案しました」

 

 

「こだわりのポイントは何ですか?」

「食材、お客様に合わせて作ること、存分にスパゲティを食べて帰ってもらう、というところでしょうか」

店長の中西は考えながら答えた。

「食材へのこだわりとは、パスタですか?」

「もちろんパスタもイタリアン産でこだわりはありますが、具材ですね。うちでは生でも食べることができるものを使っています」

「新鮮ということですか?」

「そうです。人気メニューのタラコのスパゲティに使用するタラコはそのままご飯にのせて生で食べてもおいしい北海道産ものを選んでいます。ウニのスパゲティに使用するウニペーストは、オリジナルブレンドで作ってもらっている特注です。濃厚ですが、はまる方ははまります。そして、スパゲティはもちろん、ご注文いただいてからひとつひとつ作っていきます。それがこの規模だからできることでもあります」

「というのはどういうことですか?」

 

店内は厨房とその前にあるカウンター席のみで、こじんまりとした雰囲気があり、確かに大勢の人数が入れる店ではない。

「私一人が切り盛りするにはこれぐらいがちょうどいいんです。大きな店にすればいいのに、と言ってくださるお客様もいらっしゃるのですが、一人一人のお客様のペースに合わせて作ることができます。ゆっくりとしたペースでしっかり作っていかれるので理想的なんです。お客様のご要望にも応えることができますしね」

 

 

「おひとりで作っていらっしゃると大変そうですが、中西さんの味が保てますよね、確かに。お客様の要望に応えるというのは、どういうことですか?」と晴海が質問すると、

「麺のかたさとか、味付けで塩分控えめのご希望とか、いろいろありますよ」

 

「ボリュームがあると聞いたのですが」

「イタリアンレストランなどでスパゲティを頼むとお皿に少ししかのっていないなんてこともありますよね。スパゲティをおなかいっぱいに食べて満足して帰っていただきたいので、多めにしてあります」中西が笑顔で答える。

 

「手ごろなお値段で、本格的なスパゲティを食べることができるということですね。ありがとうございます」

一通りのインタビューを終えると、晴海は店長の中西に頼んでおすすめメニューを作ってもらうことにした。

次号のページでは、2品の紹介予定。店長の中西は手際よく調理をすすめている。

 

パスタがゆであがり、完成するまでに約10分ほどと店長はインタビュー時に晴海に告げたが、2品は15分しないで晴海の前にだされた。

「お待たせしました。ウニとタラコのスパゲティとベーコンとタマゴとキムチのスパゲティです」

 

「早いですね」晴海が驚いて言った。目の前には白い皿にのったクリームスパゲティと、木の器にのった刻み海苔がかかったスパゲティ、それにランチ用のサラダが並んでいた。

刻みのりの磯の香りがぷーんと漂い、食欲をそそる。

「おいしそうですね」

すでに店内の写真を撮り終え待機していた木村。出来上がったばかりのスパゲティの写真を次々に撮っていく。

晴海はその様子を横でじっと見守っていた。

誌面用の写真が撮り終わり、晴海が記事のために味見する時間になった。

 

「どちらも熱いうちがおすすめです。というのも冷めるとバターやクリームがごわごわになるので食感が変わってしまうので」と店長の中西は付け足すように言い添えた。

 

 

「いただきます」

磯の香り漂うウニとタラコのスパゲティにフォークを入れる。ふわっとウニとタラコが香る。

一口食べた晴海は「おいしい」と顔をほころばせた。

「和風味が好きなのですが、和風テイストに感じますね。タラコのプチプチ感とウニの濃厚な味とがまざりあって絶妙です。ソースが美味しいですね」

「ありがとうございます。お好きな方は大葉を追加なさったりもするんですよ」中西は嬉しそうに笑顔で言った。

「では、ベーコンとタマゴとキムチのスパゲティもいただきます」

これまで晴海はいろいろなスパゲティを食べてきたが、キムチが入っているスパゲティを食べるのは初めてだった。

 

(辛いのかな……)見た目はクリームスパゲティのカルボナーラのような印象だ。晴海は早速スパゲティの山をフォークで崩してくるくると巻き付ける。キムチの白菜と思われるものがある。晴海は一緒に巻き付けて口に運んだ。

 

「あ!白菜がシャキシャキいってます。辛くないんですね。カルボナーラに一味加わったようなそんな不思議な味ですね」晴海は言い表すことのできないおいしさに驚いた。意外なおいしさだった。

「お客様からもどんな味かと聞かれるんですが、なかなか説明しずらいんです。予想を裏切る味だと思います、と皆様には言っています。お好きな方はお好きで、そればかり注文なさいますね」店長の中西はふふっと嬉しそうに笑った。

「手作りドレッシングを使ったこちらもどうぞ」

ランチにつくというミニサラダだ。レタスの上にコーンとドライミートがパラパラとまぶしてあり、オレンジ色のドレッシングがかかっていた。

晴海は、さっそく食べる。(このドレッシングは、ざらざらとした感じで酸味がある……ベースはニンジンとか玉ねぎかしら?)

「少し酸味があるけれど、コーンの甘さが引き立ちますね。このドレッシングのサラダはビールとかにも合いそうですね」

 

  

 

「そうですね。おつまみになるものは置いていないので、サラダを先に食べながらビールを飲んで、そのあとにスパゲティを食べる方もいます。もちろん、ワインを頼むお客様もいます」

クリームが濃厚なため、食べていくとおなかがいっぱいになっていくというのは本当で食べ応えのあるボリュームだと晴海は素直に感じたのであった。

 

小一時間ほどで取材を終え、高円寺駅へと向かう帰り道。

「高円寺にこんな穴場があったなんて、意外でした。阿波おどりしかしらなかったので」晴海がぽつりと言った。

 

「高円寺は反対側の純情商店街が有名だよね。でも、高架下のエリアにも今後おしゃれなお店が増えていくのかもしれないね」ベテランカメラマンの木村の写真は美味しさをそのまま伝えることで定評がある。あこがれの大先輩のカメラマンと取材に行かれたことは晴海にとってとても緊張するひとときでもあり、嬉しいひとときでもあった。

 

「和香子さんの写真に負けないいい記事書きます」

「楽しみにしてますね!」木村は、頑張れと笑顔で晴海にエールを送った。

 

翌月発売された月刊「ディナランチ」には、「今すぐ行きたい隠れ穴場イタリアン」に中央線沿線の穴場の店として『HIDE』が紹介された。

晴海は、店で食べた時の感動を文字で表現するのにいったい何回原稿を書き直したことか……

予想外の驚きの味、美味しさを晴海はそのまま伝えることを意識して原稿を書いた。

ベテランカメラマン木村和香子の撮った出来立てスパゲティのおいしそうな写真に加え、晴海の率直な味の感想が若い女性の心にとまったのだろうか、記事を読んだ女性がHIDEへと食べに行くようになったそうだ。

 

一人で立ち寄る女性もあれば、友達と、また2種類のスパゲティを注文して、二人で仲良くわけながら食べるというカップルもいた。

 

「あった!ここじゃない!HIDE」

「高円寺のこんなところに店があったんだね。さすが隠れ穴場イタリアン」そう言いながら20代前半と思しき女性二人組が、高架下脇にあるスパゲティ店“HIDE”へと入っていく。

 

古き良き高円寺を守りながら、若者をも呼び込むちょっとおしゃれなハイカラな高円寺へ。

今、高円寺には新しい風が吹き始めている。

 

HIDE

◆営業時間 :

ランチ(平日・土日)11:00〜15:00(ラストオーダー14:30)

ディナー(平日・土)17:00〜21:30(ラストオーダー21:00)

◆定休日 : 月曜日

◆住所 :東京都杉並区高円寺南3−59−9

◆2016年7月開店

 

HIDEおすすめポイント!

① ボリュームたっぷり、お手頃価格、味にこだわる本格スパゲティ店

イタリアンレストランで修業したシェフが作るスパゲティはどれもボリュームたっぷり!おいしさ抜群!

② 女性一人でも入れるお店

飲み屋さんや牛丼、回転ずしなど、一人で入りづらくてという女性にも安心して利用できる店を高円寺に作りたかったという店長。その想いが通じて、仕事帰り、ランチなど、一人で訪れる女性も多いとか。

③ リクエストに応じてくれる店

スパゲティは食べたいけれど、カロリーが気になる、塩分控えなくては、そんな方はぜひ店長にご相談ください。注文時に希望を伝えれば、塩分控えめ、バター控えめなど個々の要望に沿って仕上げてくれます。体調に合わせて希望のスパゲティをどうぞ!

④ 食材へのこだわり

生でも食べられる食材を厳選して使用。

使用する素材の味にはとにかくこだわっています!とのこと。

⑤ 締めのスイーツは店長のやさしさ

スパゲティの店なのでデザートはありませんが、口さみしい方へとチョコレートがカウンターに置いてあります。食後に締めで召し上がる方も多いのだとか!うれしい配慮ですね。

⑥ ランチはミニサラダ付き

ランチにはスパゲティにミニサラダがつきます。オリジナルドレッシングがさっぱりしていておいしいです。

 

◆HIDEの店長おすすめメニュー

「全部!」とのことですが、無理を言って店長に選んでいただいたのがこちら。

・タラコとウニのスパゲティ 1100円

※北海道産の生でも美味しいタラコと、この店独自のオリジナルブレンドのウニペーストを使用

・ベーコンとタマゴとキムチ 1100円

※カルボナーラとキムチの華麗なる共演。予想を裏切る美味しさです。

・ミートソース

 ※お子様にも大人気のミートソース。ソースはもちろんお店の手作り。

 

◆HIDEの店長から一言

スパゲティを食べたくてもイタリアンレストランだと量が少なく物足りないこともあるかと思います。お高くとまらないで、美味しくたべてもらいたいです

 

 

第7話 ~再び元気に帰還せよ~

 

「訓練兵1名ご帰還です」

「お疲れ様です」

明るく威勢の良い女性戦闘員の声が店内に響く。

「ただいま、戻りました」城戸雅史は、そう言って敬礼する。

「おう!少佐」

ガンシューティングをしていた林中佐は振り返って一声かけると、再びペーパーターゲットに向かって銃をかまえた。

城戸は入り口近くのカウンター席に腰かけた。

プスッ

空を切るような鋭い音。

「中心に近くなっています。9番の内円、真ん中寄りですね」

ペーパーターゲットのサイドで、訓練を見守るモスグリーンの軍服姿の女性戦闘員が林中佐に言った。

「中心は難しいな。次こそ」

中佐は再び銃をかまえる。店内には城戸のほかにも3名の常連が座っていて、みな一様に中佐の次の1発の行方をじっと見つめていた。

ここは高円寺高架下のすぐ隣の道沿いにある“MT基地”。

“味楽”という赤い看板が目印の定食屋を通り越した先の曲がり角、左手に3件店があり、そのうちの一番奥の店である。昼間は、あまり目立たないが、連日20時になると店に灯りがともる。

夕方6時になると“ブリキの時計“という昭和の空間を醸し出すバーが開店し、その2時間後、夜8時になると隣にある“MT基地”が開店し、このあたりも活気づいてくる。

 

城戸は新宿に本社がある通信関係の会社に勤めている。長年総務で、デスクワークだったが、4月の人事異動により、営業部に配属となった。黙々とこなすデスクワークと違い、取引先への説明などが必要とされる。もともと話すのは苦手なほうで、この人事異動には不満もあったが、上の決めたことなので仕方がない。

4月からの1ヶ月は慣れない人前での説明の練習で、心も体も疲れはてていった。「説得力がない」、「滑舌が悪い」、「自信なさげに見える」など営業にこなれた先輩社員から色々と指摘を受けるものの、うまく改善ができず、城戸は一人悩んでいた。

 

城戸は、吉祥寺駅が最寄の大学の経済学部に通っていた。同じ経済学部の香坂、日下とは高校時代からの親友だった。当時、写真部で活動していた香坂は、風景など被写体を求めて学園でも、いつもカメラを携えていたほどの写真好きである。日下はスキー部で、冬になると週末にはスキーに出かけウィンターシーズンを満喫していた派。

 

城戸は、アニメ研究会に所属していた。その名の通り、アニメについて語り合ったり、また、学園祭では自由なオリジナルのアニメを制作して映写機で映し客に見てもらうなどということもしていた。

幼少時代の城戸はアニメ「ガンダム」が大好きだった。その後も、マクロスや、エヴァンゲリオンのような近未来的なSFアニメものにはまっていった。登場する人物はもちろん、その世界観や、メカについてなど当然詳しくなり、大学ではその分野をともに話せるサークルということで、アニメ研究会に入ったのだった。

 

経済学部の仲良し3人組は、それぞれにサークルは違ったが、高校時代からの友情は続き、講義についての意見交換や勉強などをしながら、4年を共に過ごしたのである。

 

卒業後、日下は中小企業の建設会社に入り、体力を活かして、現場をまわったり、工事をとってくるという仕事に就いた。日下は、自分が何かを共に作り上げていくことが好きな人間だった。

 

写真に没頭していた香坂は、高円寺の不動産会社に勤務している。香坂も人に喜ばれるのは嫌いじゃなかった。

家や土地、マンションといったものの売買を担当している。写真部での腕を活かし、物件での撮影時にはアングルにこだわるなど、自分なりに仕事に楽しさを加えていた。3人は、それぞれ別の会社に勤務はしたが、卒業後も2か月に1回は欠かさずに集まり、男同士楽しく飲んでいた。

 

そんな中、日下が1年前に大阪支社に配属となり、大阪暮らしとなった。そのため、2カ月に1回の飲み会は、香坂と城戸の二人きり、日下が帰京している時には3人で集まるという具合になっていた。

ゴールデンウィークを前にした4月終わり、香坂と城戸の二人がいつものように集まった。場所は香坂の職場がある高円寺。高円寺には数多くの店があるが、3人組はなぜか高架下エリアの店が好きだった。

 

城戸は突然の人事異動で、慣れない環境であることを香坂に告げた。

「黙々とこなすほうが、好きだもんな。なんでまたお前を営業なんかにしたのかね」と香坂が同情して言った。

「自信なさそうな言い方はよくないですね、説得力にかけますから、なんて注意されてもなぁ。会社、やめようかな」

「そんなにつらいのか。自信のあるしゃべりってひとくくりに言われてもな、わかんないよな」と香坂が心配そうな顔をする。

「まあ、本当につらいなら、無理しないで活かせる仕事探したほうがいいよ。あとは、性格かえるかだよな」

「ありがとう。もう少し頑張ってみるよ」

 

城戸は根性がないわけではないのだが、どのように切り開いていいかがわからずにいたのである。その答えを香坂ならくれるかと期待していたが、思ったほどの収穫は得られなかった。「もう少しふらふらしてから帰るわ」城戸はそう言って、香坂と別れた。

 

高円寺には特撮やアニメ関係のグッズ販売の店、“ゴジラや”があるが、21時を過ぎたこの時間ではもう店もとっくに閉まっている。店主の木澤さんがマスターをしている“ゴジラや2”のバーで1杯飲んで帰ろうと、城戸は再び高架下の道を戻っていった。“ゴジラや2”の扉の外から中をのぞくと、この日は番長の日だった。木澤さんがいる日と、番長と呼ばれる女性スタッフ担当の日がある。城戸はどうしようかと迷いながら、高架下から1本隣の夜空が見える通りへと何気なくでた。

 

すると、

「健闘を祈る!」

はきはきとした女性の声が耳に入った。

(なんだ!?)城戸は声の先を見た。

3件並んだ店の一番奥の店から客が出てきたところだった。

興味にかられ、城戸はその店に向かった。“MT基地”と書かれた看板が置いてあった。

「MT基地・・・?」

何か普通とは違うものを感じた城戸は、緑の扉を開けていた。

「訓練兵、1名ご帰還です」

「お疲れ様です」

モスグリーン色のミリタリー服(軍服)姿の女性数名のはつらつとした声に城戸は迎えられた。

「え?」唖然とする城戸に

「こちらに座ってください。初めてですよね。説明しましょう」ショートヘアーの軍服姿の女性が城戸に声をかけた。

色白でスラっとし、優しい笑顔の持ち主だった。

「皆様は訓練兵です。質問があれば私たち戦闘員に聞いてください。料金は1時間3300円で飲み放題ですが、頼めるドリンクは階級により違います。初めての方はこの二等兵から始まります……」

それが、このコスプレバー「MT基地」との出会いだった。

“MT基地”は基本飲み放題だが、階級により飲める酒が違うのがみそだ。二等兵はビールやハイボール、ソフトドリンクといったものだが、軍曹や少佐など階級があがれば、アニメカクテルや高級な酒も注文できるのである。

 

では、どのように昇級するのか?

店では訓練が行われる。

私たちが暮らす現実世界は戦場とみなされ、この“MT基地”に戻った訓練兵は休息し、訓練をつみ、再び戦場へ戻っていくというのがコンセプト。そのため、店では訓練シートが用意され、たくさんの訓練の中から訓練兵(客)はチャレンジをしていく。そして、

3つクリアするごとに1つ階級がUPしていくのである。

カラオケでの勝負、サイコロでの出目を競うなど、訓練にはいろいろなものがあるが、中でも、多くの客がはまるのがガンシューティングである。

 

ガスガンで10発、ペーパーターゲット(紙の的)を狙って撃つのであるが、簡単なようで意外に難しく、なかなか10発すべてを中心近くに撃つことはできない。中心の点を囲むように2重の円が囲んでいるよくある的だが、内側の円の中に撃ち続けるのもなかなか難しい。そのため、当たった時の喜びと満足感は大きく、ついエキサイティングしてしまうのである。

 

そして、戦闘員はみなアニメにも詳しいため、SFアニメなどを好きな客は、アニメトークで盛り上がることもできる。“MT基地”は、飲むだけでなく、ストレスを発散することもできる大人のためのアミューズメントバー。普段の生活では味わえない、自分でない自分になれる、不思議と心弾む空間なのであった。

 

SFアニメでの戦闘シーンを見慣れている城戸にとって、このような空間は違和感なく入り込めた。むしろ、楽しかった。若い女性ではなかなか知っていないような昭和のアニメ昨品“タイムボカン”シリーズや“エヴァンゲリオン”などの話ができる。城戸はこの店が好きだった。

 

通ううちに、同じ訓練兵である常連たちとも仲良くなった。それぞれ、店の外の現実で何をしているかなどは聞かない。訓練を共に楽しむ、時に懐かしいアニメの話をしたり、飲んだりして、ここでのひとときを楽しむ。それが気楽でよかった。

 

城戸はアニメの影響か、ガンシューティングの腕前がなかなか良いほうらしい。的に当たった場所から得点を計算していくのだが、徐々に高得点をだすようになっていった。戦闘員の女性から励まされ、ほめられることで、城戸にはなにかしら見えない自信がついていった。

 

この店の名物に不定期に変わるアニメカクテルというものがある。一等兵から注文できる酒で、アニメキャラクターの色を感じさせるようなものや、アニメのストーリーから生まれたものなどがあり、よく考えるものだとアニメ好きの城戸は感心していた。

例えば「ドラゴンボール」なら黄色とオレンジ系の2層のカクテル。オレンジのコスチューム姿の悟空が目に浮かぶ。味はオレンジ系でやや酸味がありアルコールを感じる大人向けの仕上がりだ。

そして「ソウルジェム」はきれいな紅茶色のグラスと小さなショットグラスで1セット。

ショットグラスの液体をグラスに注ぐとみるみる濁り、いわゆる「穢れ」になるというもの。手元でまぜて楽しめるというのが面白く、さっぱりとした飲み心地で女性にも男性にも好評な「魔法少女まどかマギカ」の世界が楽しめるアニメカクテルの1つだ。

 

そして、なにより城戸が好きなのは帰る時、店を出る瞬間だった。

「訓練兵1名、出撃です。」

「健闘を祈る」

戦闘員の女性全員で、また、時には店にいる訓練兵の客たちも一緒になって、「健闘を祈る!」とエールを送り、背中を押して見送ってくれるのである。

この言葉に城戸は何度励まされたことだろう。

 

この店を出た世界は戦場。城戸にとって、まさに現実は戦場だった。

「自信がない声出すな」「きちんと説明しろ」などと言ってくる敵に立ち向かわなければ会社では生き残れない。

 

城戸は学生時代に比べて自分の頭がかたくなってきていたことに、MT基地に通い始めたことで気付かされた。何事も柔軟に!状況に応じて作戦は変更されるのだ。戦場に送り込まれたのだから身を守るために、戦い抜こう!

そう思い始めたら、城戸は気が楽になった。

 

現実社会という戦場で疲れたら、このMT基地に帰還し、休息し、自分を鍛えて再び厳しい世界へと戻るのである。そう、今では、城戸には戻る場所、笑顔で待つ仲間がいる。うまくいかないことも、思い通りにできないことも、ダメだしされることも多々ある。

悔しいとき、落ち込んでしまう、そんな時、城戸の耳にはあの励ましの言葉が聞こえてくる。

 

「健闘を祈る」

 

再び生きて帰還するために今を乗り切るんだ!

城戸の目には、今までとは違う輝きが宿っていた。彼の心を支えてくれる自信という輝きが……

今宵も高円寺南3丁目に威勢の良い女性の声が響き渡る。

「訓練兵1名、ご帰還です」

「お疲れ様です」

 

【情報コーナー】

MT基地(M=妄想  T=逃避   妄想逃避する基地)

営業時間:20:00~4:00

定休日:なし

電話番号:03-4291-8042

Twitter:@mtkichi

住所:杉並区高円寺南3-59-9 ステラハウス103

 

◆メニュー

1時間(飲み放題):3300円

3時間パック(飲み放題):8800円

4時間パック(飲み放題):11000円

※基本料金が時間制のパック料金です

※フードメニューもあります

 

◆MT基地開店への想い

・地域に貢献したい!いつも支えてくださる高円寺の皆様、街のお役にたてれば・・・高円寺の阿波おどり、高円寺フェスに呼ばれたら、コスプレでお手伝いに!盛り上げに来てくれます。心強いですね!

◆女の子だけで運営

「女の子が働ける場所」作りが第一のモットー。加藤オーナーはじめとする9名の戦闘員(女性スタッフ)ですべてを運営しています

加藤店長(最高司令官)よりの一言

かっこつけずに、どんどん遊んだもの勝ち!

遊んでくれた分だけ、たっぷりサービス(ドリンクの種類が増えていく)もあります。ガンシューティングも楽しんでください。

全力で楽しんでくれる、一緒に楽しんでくれる人にぜひ来てほしいです。

◆おすすめポイント

・飲むだけでなく、毎日遊んで楽しめる大人のアミューズメントパーク!お客様は訓練兵、女性スタッフは上官という設定でお酒も飲めてワイワイ楽しめる

・訓練をすることで、階級がアップして飲めるお酒が増えていきます。

・スタッフ全員女性です!アニメトークもお任せ!

・シューティングで一日の疲れもふっとばせ!

 ペーパーターゲットをガスガンで撃ち抜くシューティングは、楽しさと充実感がえられること間違いなし!

・おしゃれでおいしいスタッフ考案のアニメカクテル!色や世界観を楽しみながら飲んでほしいです。詳しくは戦闘員にお尋ねあれ。

 

 

第6話 「レンズを通して見えてくる世界」

 

「昼飯、行ってくるわ」

高寺はそう声をかけて、不動産屋の扉をでた。

 

ついこの間までは、1から面倒をみてきた宮坂と共に“タブチ”へと向かっていたが、9月に突然の家の事情により宮坂邦弘は高円寺駅そばにある不動産屋を辞職し、実家のある四国へと戻っていった。宮坂が来る前は、“タブチ”にほぼ毎日一人で通っていたのだから、元に戻っただけなのだが、なぜか高寺は一人で昼飯に向かうのが寂しく感じられた。

 

秋が訪れ、高円寺の高架下を吹き抜ける風も冷たくなってきていた。

宮坂がいた頃には帰りにコーヒーを一杯飲んだり、寒い日には高円寺ストリートの入り口にある「“一口茶屋”でたい焼きを買って食べたりして店に戻ったものだが、一人となった今では昼飯後もそのまままっすぐ店へ帰るという日々が当たり前になった。

 

 6年ほど前、一人娘の真理絵が結婚してからは高寺の家もどこかしらひっそりとなり、夫一人では妻の良子も作り甲斐がないのか、簡単な夕食が食卓に並ぶようになった。

そして、真理絵に子供が生まれ、祖母となった良子は、孫の世話をしに行くこともあり、さらに夫は二の次になった。高寺が自分から真理絵の家に行くことはなかった。娘婿に気を遣わせてはいけないという思いもどこかにあった。真理絵が子供を連れて家に来る日には、仕事で家にはいないことが多く、高寺には真理絵にも孫にも会う機会がほとんどなかった。妻の良子から語られる孫の様子で成長を知るぐらいだった。

 

 高寺は、不動産を扱う大手企業から、20年ほど前に高円寺の不動産屋の店長となった岸から誘いを受けて、それ以来、岸の不動産屋で働いている。仕事は嫌いではなかった。頼まれればいやとは言えないたちで、娘と同年代ぐらいの若者の指導を頼まれた時には、前向きに頑張ろうとする若者の意欲を感じ、成長を見守るのが楽しく張り合いもあった。しかし、その若者宮坂がいなくなってからは毎日が平穏に過ぎていくことに何か物足りなさを感じるようになっていた。

 

 高寺が勤める岸店長の不動産屋には高寺を含め7人の社員が働いていた。年代もまちまちで、現在一番若い男性は、30代前半の香坂芳雄だった。写真を撮るのが趣味で、次の休みにはどこそこへ写真を撮りにいくのだと仕事の合間に隣の席の近藤に話しかけている。不思議なことに、撮ってきた写真を店にもってきて見せることはなかった。そのため、高寺もほかの社員も実際に香坂がどんな写真を撮ったのかを知ることはなかったのである。

 

 香坂芳雄は学生時代に写真部に入っていた。フィルムカメラを扱うのが好きで、デジタル化が進んでもフィルムを使っての撮影にこだわっていた。デジタルは何枚でも惜しげなく撮れるのが魅力だが、フィルムカメラで一枚一枚しっかりとシャッターをきって写すのが香坂にはたまらなく楽しかった。デジタルカメラの写真とフィルムカメラでは仕上がりの質感が違い、好みもあるだろうが、フィルムでの質感の仕上がりが香坂は気に入っていた。

 

とはいうものの、不動産屋に入社してからは物件の撮影でカメラを使うことが度々あり、枚数をとる必要があるので、香坂は店ではデジタルカメラを使っていた。香坂はフィルムの現像に高円寺ストリートの入り口にある“アサヒ商会”を利用していた。初めてこの店を知ったのは、写真部の先輩からだった。

 

香坂の通う大学は高円寺駅から4駅離れた吉祥寺駅が最寄り駅だったが、その大学の写真部の先輩の一人は現像するのに高円寺駅の“アサヒ商会”まで行って頼んでいた。ある日、香坂が理由を尋ねると、その店はプロの写真家もわざわざ訪れるほどのいい仕上がりを約束してくれる店だとこっそり教えてくれた。

 

香坂が所属する写真部では、風景、人物などそれぞれがテーマをもって撮っていた。人物の肌の色、風景のきらめき、どの写真も色彩が命だ。そして、シャッターをきったその瞬間を最高の色で現像してくれるのがこの店。一見、どこにでもありそうなカメラ店にみえるのだが、実は違うのである。

 

香坂は卒業して就職した今でも、休みの日には何かテーマをきめて、フィルムカメラを片手に身軽に撮りに出かけていた。撮影の予定を立てるのも香坂は好きだった。念入りに下調べをして一日の計画を練るが、必ずしもその通りにはいかないものだ。

 

天候に左右されたりすることもしばしばで、特に風景では光があるなしでずいぶんとイメージも違ってしまう。思い描いたように撮影できないことももちろんあるが、それでも香坂は撮影することを楽しんだ。もちろん予定通りにいく時もある、そして予想以上のものを撮れることもあった。その1枚1枚が記念であり宝だった。香坂は趣味で撮り続けるその写真の現像を今でも昼休みや仕事帰りなどに高円寺の“アサヒ商会”で頼んでいた。

 

 “アサヒ商会”の店長は、よく気がつく男性でカメラや写真に詳しい。

通常デジタルものは客が各自備え付けの端末に座って操作して大きさや種類など決定したら、最後に出てくる注文の紙を受付にもっていく。が、初めてだったり、年配で機械などに詳しくない人は、わからなくて手が止まってしまう。

 

店長は、気軽に、そんな客に声をかけて、操作方法や希望にそったものを選ぶ手伝いをさりげなくすばやくするのである。香坂は、店長がみせるそのような気遣いに、さりげない一歩先の提案を自分も仕事に活かしていかねばと気付かされたのだが、長年通いながらも、アサヒ商会の店長にそのことを話したことはもちろんなかった。

 

四国に戻った宮坂邦弘から、退社して2週間ほどしてから、店の店長含む社員7人宛にハガキが届いた。そこには今までのお礼、またいつか戻れる日がきたら高円寺の店に戻って一緒に働きたいと願っていること、高円寺の味、“タブチ”の昼飯やたい焼きの味が懐かしく感じられること、今は母親の介護とバイトで暮らしていることなどが手短に記されていた。決して達筆ではなかったが、心のこもった文字で書かれていた。

「介護となると大変だ。体をこわさないといいがね」60歳、定年間際の年長者の近藤が心配そうに言った。

 

「まあ、今のところは元気そうで何よりですね」と岸店長が目を細めてほほ笑んだ。

「宮坂さんにカメラを教える約束をしていたのに、その約束を果たす前に戻ってしまったからな」と香坂が肩を落として言った。「でも、いつか四国に撮影旅行には行ってみたいですね」

 

「私には趣味がないんで、香坂さんに写真の撮り方を教えてもらおうと思っているんです」宮坂がそう言っていたのを高寺はふと思い出した。「もちろんスマホでは撮ってますけどね。香坂さんが話してる、レンズがついたフィルムのカメラでピントを合わせて撮るっていうあれです。そのうちにカメラを買っていつか故郷に戻ったら風景を撮ったりして残したいんですよね」そう言って微笑んだ宮坂は、もうしばらく東京にいるつもりだったのだろうが、急な事情により、やむなく帰郷したのであった。やり残しもあったのかもしれないと高寺はふとその時、初めて思った。

 

 高寺には趣味はなかった。退職した年配男性が趣味で写真を始めるなんて話を耳にするが、写真を撮るのに何故のめりこむのかよく理解できなかった。だが、時には始めるのに理由などいらないのかもしれない。なぜなら、高寺はなぜかこの時を境に急に何か撮ってみたいと思うようになったからだ。

 

もう30年ちかくも前に買ったミノルタのカメラが家のどこかにあるはずだった。高寺は、休みの日に早速押し入れの奥にしまってある今は使用しないものが詰めてある箱を取り出した。中には昔のアルバムやレコード、大事にしていた貯金箱などが入っていた。

 

その品々にまじって、愛用していたミノルタの一眼レフカメラα7700iを見つけた。高寺は「懐かしいな」と言いながら両手で持つ。しっかりとした重みを感じた。当時はデジタルなどなくカメラといえばフィルムカメラだった。子供ができたら家族で出かけた時の思い出の写真を撮りたいと思い、高寺は思い切って購入した。家族3人で出かけるたびに写真を撮ったものだった。

 

時は過ぎていき、写真はその瞬間を残してくれるものだということをこの歳になって高寺は身に染みて感じた。時代とともになくなる風景や店、人々がいる。目に焼き付けるのも一つの道。そして、いつまでも思い出せるように写真として残すのもひとつの道なのだ。

「今でもこのカメラに入るフィルムはあるんだろうか」香坂に聞くのもなにかかっこ悪い気がして、高寺は“タブチ”に昼食に行った帰りに高円寺ストリートの入り口にあるカメラ店を訪れた。店の右側にある5台の端末には間をあけるようにして2人の客が座って画面で操作をしていた。

 

出入り口のところにはフィルムの入ったかごがあり、店の左の壁にはいくつもの種類のフィルムがかけてあったが、高寺には違いがわからなかった。高寺は、左奥にある受付にむかった。

「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」

高寺と同じくらいの歳かと思われる優しそうな男性、この店“アサヒ商会”の店長が高寺に声をかけた。

「あの……ミノルタの昔のカメラなんですがね、どのフィルムなら使えますかね?」

いつになくか細い声で高寺が聞いた。

「フィルムカメラをお持ちなんですね。そうですか。このあたりならどちらも使いやすいと思いますが、何かこだわりの点や用途はありますか?」

高寺は、まずは写真が撮れれば良いと思ったので、

「風景や人物や物や、どれでも写せるのがいいんですが」

「ではこの種類あたりが、今は特価でよろしいかと思いますよ」

店長は緑色のフィルムの入った箱を棚のフックからとって、高寺に渡した。

「お願いします」プリント注文の客が店長に後ろから声をかけてきたので、「ちょっとすみません」そう言って店長は受付カウンターに戻っていった。

まずはひとつ買ってみることにした。

「何かあればいつでもご相談くださいね」帰り際に店長はそう言って高寺を見送った。

 

「あれ?高寺さんもフィルム派ですか?僕も同じ店、使ってますよ」

フィルムの箱の入った“アサヒ商会“の袋を手に戻ってきた高寺を見て香坂がいち早く言った。

「古いカメラしかなくてね」

 

苦笑いして見せる高寺に「何言ってるんですか!今はフィルムがブームなんですよ。若者がインスタあげるのに、質感が違うからってわざわざフィルムカメラで撮影するぐらいなんですから。高寺さんも最先端派ですね!」

 

「いや、私はたかだかその辺の風景を撮るぐらいで」そう言って、高寺は再び苦笑いしたのであった。

 

その翌日から、高寺はせっかくだからと1日1枚何か撮ることを日課にした。家の中のこともあれば、昼に”タブチ“の昼食を撮ってみたり、歩く途中の高架下を撮影したりしてみた。

 

仕上がりはプロのようにすばらしい写真ではないだろうが、自分なりの記録で思い出を撮りためたいと思っていた。

デジタルと違うのは現像するまでどんな仕上がりかわからないこと。だが、それも楽しみだった。現像した後に、写真を見ながらその日々を思い出すのである。今まで興味なかった分野だが、たしかに、面白いと高寺は思うようになっていた。張り合いのなかった日々と違い、毎日、何かを見つける楽しみができたのである 。

 

10月も末になり、北風が吹く寒い日、”タブチ“の帰り道に一口茶屋のたい焼きが目についた。よく寒い日に宮坂に誘われて食べたものだったが、この日の写真はここにしようと高寺は決めた。

 

たい焼きを買うついでに、「一枚ここの写真を撮ってもいいですか?」相変わらず元気に働く“一口茶屋”の主人に声をかけた。

「店だけならいいですよ。すみませんが、私は写るのが嫌いなんでね」主人は、にこやかにそう言いながら熱々のたい焼きの入った袋を高寺に渡した。

 

「ありがとうございます。最近写真を趣味で撮り始めたもので、どこかにだしたりはしませんので」そう言いながら高寺は店を背景にして、たい焼きを一枚写した。

宮坂のハガキには“タブチ”の昼飯とたい焼きのことが書かれていた。高寺は、そのことを忘れてはいなかった。

 

“アサヒ商会”にフィルムを出しに行くと、ちょうど香坂が受付で写真を受け取っているところだった。A4ぐらいの大きな写真のようだった。

 

「ああ、高寺さん」香坂が気付いて声をかけた。

「現像ですか?」

「ええまあ。ずいぶん大きくするんですね」

「あ、これですか。いいのが撮れたら四つ切サイズにしてるんです。この店だと色合いもいい感じで仕上がるんですよね。飾っておくのに大きくしてるんですよ。今度高寺さんの写真の話も教えてくださいね。お先に」

 

香坂はにこやかにそう言って先に店を出ていった。

高寺はフィルムを店長に渡した。

「1時間ほどでできますが」

「あとでとりにきます」

名前と連絡先を記入して、高寺は店を出た。

 

夕方、高寺は再び”アサヒ商会“を訪れ、現像したものを受けとって帰宅した。部屋のふすまを閉めると早速、写真の束を取り出した。きちんと写っているだろうか?部屋にこもって一人で見るこの瞬間がドキドキワクワクする。

 

日々の記録が高寺目線でしっかり写っていた。プロのような磨き上げられたおしゃれな構図ではないが、たい焼きと店がしっかりくっきり写っていた。そして、“タブチ”で撮ったカレーライスも、赤い福神漬けが色鮮やかに浮き出ていて、美味しそうに見えた。

 

高寺はその2枚をまずは送ることにした。趣味で毎日撮影を始めたことなど近況を知らせる手紙を宮坂宛に書いた。

いつか四国の風景も撮りに行きたいと書き添えた。何か高円寺のもので送れるものはないかと考え、”タブチ“の前にある”ゴジラや“を思い出した。

 

“ゴジラや”の店主はテレビの鑑定番組で鑑定士をしている実は有名人。だが、飾ることなく気さくな人柄で客からも親しまれていた。その”ゴジラや“では高円寺の阿波おどりの服装をした高円寺オリジナルのテケというかわいらしい猫の人形を売っていて、高寺が勤めている不動産屋の岸店長も高円寺らしい!とひとつ買って店内に飾っていた。

 

「阿波おどり、今年は帰郷して見れなかったよな、たしか」宮坂が8月下旬に突然四国へ一時戻ったことを思い出して高寺はぽつりとつぶやいた。「一緒に送ってみるかな」

 

10月の末、四国に住む宮坂邦弘は高円寺の高寺からの宅急便を受け取った。中には、高寺が撮った2枚の写真、宮坂を慰安する手紙、阿波おどりの服装をした猫の人形と阿波踊りサブレの箱が入っていた。

 

「“タブチ”の前の”ゴジラや“の阿波おどり姿のテケという猫の人形を送ります。店主の木澤さんはテレビの「開運!なんでも鑑定団」に出演しているので、そちらでも見れるかもしれないですね。高円寺の阿波おどりは東京では有名ですので飾ってもらえればと思いました」高寺の手紙には人形の説明としてそう書き添えられていた。

 

「宮坂君もぜひ毎日を撮りためてみてください。お元気で」

高寺の手紙はそう締めくくられていた。毎日を乗り切るような慣れない日々で、宮坂は心身ともに疲れがたまってきていた。

 

将来の夢を考える時間は戻ってきてからはなかったように宮坂はこの時あらためて思った。

「このままじゃ、いけない。高寺さんに叱られるよな」

宮坂邦弘は懐かしそうにたい焼きとカレーライスの写真を眺めた。

「高寺さんらしいな」

けっして上手とは言えない心のこもった写真をみながら、宮坂はクスリと笑った。

 

「今年は見なかったな、高円寺の阿波おどり」苦笑しながら、衣装棚の上に阿波おどり姿のテケ人形を飾った。

 

そして、赤い菓子箱を手にすると明るい声で言った。

「母さん、東京からお菓子をもらったよ。食べるかい」

 

アサヒ商会

営業時間:

平日10~21時

土日祝11~20時

定休日:なし

電話番号:03-3330-2428

 

◆アサヒ商会おすすめポイント

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デジタル画像からのプリントはその場で少しお待ちいただいてのお渡しも可能。フィルム現像でも1時間ほどでできるスピーディさが売り。

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◆店長から一言

写真のことならなんでもお気軽にご相談ください

 

 

第5話:「安さに負けないこだわりの味」

 

「ありがとうございました」

タブチのランチタイム、食べ終わった客は自分の皿と水を入れたグラスののったトレーを洗い場前の返却カウンターに返して店を出ていく、その後ろ姿に店主は必ず声をかけている。

 

“タブチ”は、高円寺駅の高架下にある店の中でも、一番駅から離れている場所に位置する店だ。かれこれ30年まえから営業しているとかで、“お財布にやさしく、ボリュームがあっておいしいといえばここ”なんていうおなじみさんも多い店。

 

かくいう私もその一人である。

真っ赤な看板に大きく“タブチ“とあり、高架下にありながら遠くからでも比較的目立つと思う。

学生時代に四国から上京して、高円寺で一人暮らしを始めた。東京で、勝負をしてみたいと当時はかなり意気込んでいたように思う。

だが、自分の得意な分野というもの、将来何になりたい!という明確な目標はよくみえていなかった。とりあえず学生時代になにか資格を取りたいとふと思い、「宅建をとっておくといい」なんて叔父から言われたのを思い出し、猛勉強して取得したのだった。

 

大学卒業後、西新宿の高層ビルの中のひとつの会社に勤めることができたはいいが、作業に求められる速度や、新しいものを生み出す企画書作りに頭を悩まし、都会で働くのを夢見ていたものの、1年で自ら退社した。

 

何をしようかと考える中、高円寺の駅のそばの不動産屋の求人広告を見つけた。宅建の資格を持っていること、大人数でない職場ということから私でも働けるかもしれないと思い、問い合わせてみた。温かみのある店長で3か月間の試用期間から始めるということで勤めはじめた。以来、今にいたっている。

 

その不動産屋には店長を含め7人の男性が務めていたが、30代~60代と年齢層が幅広く、しかし、みんな優しく時に厳しく丁寧にわからないことをいろいろと教えてくれた。

「昼飯いくか?」と50歳に近いだろうと思われる高寺さんに誘われ、連れていかれたのが“タブチ“だった。定食やさんというのが第一印象だった。

「昼時はすごい列で待つんだよ」高寺さんは笑みを浮かべながら言った。この日は午前中に仕事がたてこみ14時を回っていた。

外の券売機で食券を買って店に入るのだが、なんせ私は初めての店なので何が食べたいかよくわからなかった。

 

 

 

外のディスプレイにあるとても大きなお皿のカレーライスが目に入った。

「何がいい?」と尋ねる高寺さんに

「高寺さんは何にするんですか?」と聞いてみる。

「カレーはうまいぞ。日替わり定食も毎日違うからおいしいしな。毎日食べても飽きないよ」

そういうと高寺さんは日替わりのボタンを押した。

日替わりよりはカレーライスが安かった。

「今日はカレーライスをごちそうになります」

「ごちそうになれ」と笑いながら高寺さんは私の食券も購入してくれたのだった。

 

店内に入るとランチタイムの波が引いた後なのか、女性がひとり食べているだけだった。すごく広いわけではないが、それでも4人掛けのテーブルがいくつかあり、込み合う時間は相席もあるのだろうな、なんて私は勝手に想像した。高寺さんは入り口で背の高いすらっとした女性店員に券を渡し、私たちは奥の席に座った。水はセルフサービスで、私は早速2つとりにいった。

 

おしゃれな東京では珍しい、温かみのある素朴な店だった。

女性が食べ終わり、「ごちそうさま」と言いながら食器ののったトレーを入り口近くの返却カウンターに置いて、扉を出ていく。

「ありがとうございました」

その後ろ姿を見送りながら店主は挨拶した。温かみのある、そしてよく通る声だと私は思った。

 

「あれがここの店主なんだよ。ずいぶん通ってるが、味は落ちない。昔は高級なレストランで修業していたなんて聞いたことがあったが、とにかくカレーはうまいぞ」高寺さんがやや声をひそめて教えてくれた。

店主は座っている客からもよく見える決して広いとはいえない厨房の中で左に右にとリズミカルに動きながら休めることなく手を動かしている。

 

優しそうな顔だちで、50代ぐらいだろうか。手際がよさそうだと素人の私でも感じた。そして、その店主は料理を作りながらも、客の動きをしっかり感知している、すごいと思った。

 

「お待たせしました」

厨房で店主が作った料理を、席側にいた背の高い女性店員がトレーにのせて運んできた。日替わり定食はステーキ丼だった。山盛りご飯の上に、食べやすくカットが入った厚めのステーキが並べられていた。

小鉢とみそ汁、サラダもつく。これで600円でおつりがくるのは安いだろう。カレーライスも到着した。

40cm弱ぐらいの長さの大きな皿にライス山盛り、カレーがたんとかかっている。真っ赤な福神漬けがアクセントになっていた。

「本当に大きいんですね」と私は言った。

「それは普通盛りだけどな、若いんだから大盛でもよかったかもな」

なんて高寺さんは言いながら、早速ステーキを一切れ食べ始めた。

 

“タブチ”のカレーは家庭的な味がした。やや甘口で食べやすい。大きめにカットされたジャガイモは中までやわらかくなっているのにホクホクもし、ジャガイモの甘みがしっかり残っていた。玉ねぎとコロコロ豚肉が入り、素朴ながらも本当においしかった。当時は自炊などしていなくて、家庭的なこのカレーライスはどこか懐かしくまた食べたい、そんな味に感じた。当然、私はぺろりと平らげた。

 

不動産屋のメンバーはこの“タブチ”を頻繁に利用しているらしく、高寺さんはここの味が気に入っていて毎日通っているという。私も、その日以来、昼は毎日“タブチ”に通い始めた。

 

ラーメンにカレーライスを付けたりするセットや、クリームコロッケの定食もあるが、カレーライスと日替わりが私は好きだった。

帰り際に「ありがとうございました」と声をかけてくれるのもなんだか嬉しくて、また来たくなる。

 

これは不動産屋の職場で、一般のお客様に対する私たちのお礼の言葉にも通じることだと私は思った。心のない文字面の「ありがとうございました」でなく、きちんと心をこめて、感謝して見送る。もしかしたら、高寺さんはそれを見せたくて教えたくてこの店に私を連れてきたのかもしれないと、ある時気づいた。

 

高寺さんは本人に気付かせて覚えさせるという教え方をたまにする。机上で学べないことを身をもって学ぶというやつだ。

高寺さんは、一見怖そうに見えるが、その実しっかり言い分を聞いてくれて、わからない場合には納得するまで教えてもくれる。新人を育てる担当らしく手寧に教え込んでくれたので、食生活も含め本当に色々とためになった。プライベートの話は基本しないのだが、過去に一度だけ高寺さんが家族の話をしてくれたことがあった。

 

試用期間開けのある日のこと。“タブチ”に昼飯を食べに誘われ、「今日はおごるよ」なんて言って食券を買ってくれた。いいことでもあったかなと思ったら、幼稚園の先生をしている娘の真理絵さんが結婚するのだと言い、「たいして家で話はしないが、嫁ぐとなるとなんだか急にさみしいような気がしてね」なんて高寺さんはくちゃっと笑って見せた。誰かに話したかったのだろうと私は思った。と同時に、普段プライベートの話など誰にもしない高寺さんが私に話してくれたことが、信頼されている気がして嬉しかった。

 

あれから6年が過ぎた。大変ながらも温かい職場で、なんとか仕事もこなせるようになり、昼はすっかり高寺さんと“タブチ”族になり、順調に日々を送っていた。

 

そんな時だった。

四国の実家で母親が倒れたという知らせがきた。父は亡くなっていて、妹は東京に嫁ぎ、母は一軒家に一人で暮らしていた。

 

急遽休みをもらって、四国に戻ったが、今後しばらくの間は、後遺症もあり、退院後の母親一人での生活は難しい状況だと医師から告げられた。誰かがそばで面倒をみる必要があるが、妹は東京で暮らしているため四国に毎日戻ることはできない。頼れる身内はそばにはいなかった。養護施設などで暮らせれば私も妹も安心なのだが、施設に入所するための金は、すぐには用意できそうにはなかった。

 

妹とあれこれ話した末、私が四国に戻ることに決めた。正直、せっかく慣れてきた東京での職場をやめるのは悔しかった。私はいつのまにか東京が好きになっていた。特にここ高円寺は、素朴な人の温かみが残っていて、その雰囲気にすでになじんでいた。親しみのある場所を離れるのは悲しかったが、いつかは地元に帰るのだとどこか頭の片隅でわかっていたのかもしれない。

四国でも不動産業の就職先はあるだろうと思いなおし、四国に戻る決意をしたのだった。

 

東京に戻り、店長に事情を話した。状況を理解してくれて、有休を消化する形での異例でのすぐの退職となった。

「高寺さんのもとで、よく成長したと思いますよ。宮坂さんは自慢の社員の一人です。お客様に対するその心はどの地に行っても伝わるはずです。ここで学んだことをぜひ地元でいかして、この仕事を続けてください。東京に戻ってくることがあれば、いつでも席をあけて待っていますからね」店長が最後にかけてくれた言葉だった。

 

私は、荷造りを終えて、四国へ向かう日、“タブチ”に最後の食事をしに行った。日替わりとカレーライスで悩んだが、結局、両方の食券を買った。というのも、この日の日替わりは、6年前、はじめて高寺さんに連れて来てもらった時と同じ「ステーキ丼」だったからだ。カレーライスに日替わりのステーキ丼、どちらも明日からはもう食べることはできない品だと思いながら食券を握りしめて店へと入った。

 

毎日くる常連になっていたので、店主も私の顔を覚えてくれていて、この日も「いらっしゃい」と言いながら迎えてくれた。

ランチタイムをさけての午後の時間帯、この日は、店主一人で切り盛りしていた。いつもと変わらず、厨房の中で左右に動き、華麗な手さばき。カレーの準備をしながら、ジュージューと肉を焼く音がし、肉の焼けるいい匂いが漂ってくる。あっという間に料理2品ができあがる。

「日替わりとカレーです。お待たせしました」店主自ら運んできてくれた。

 

私は、6年間ほぼ毎日お世話になったな、という思いをかみしめながら、ステーキ丼とカレーを味わった。

美味かった。そして、あらためて、私を高円寺で育ててくれた味だと思った。

 

会計は済ませてあるから、食べ終わり店の扉をでれば、それでおわりだ。食べ終わった客が出たあとで、店内にはたまたま客は私しかいなかった。

私はトレーを返却したあと、見送りに厨房から出てきた店主に言わずにはいられなかった。

 

「高円寺に勤めていたので、毎日通わせていただきました。ご主人から学ばせていただいたこともたくさんあり、毎日が本当においしくてあきなかったです。実は家族の事情で四国に戻ることになり、明日からもうここに伺うことができません。すごく残念です。本当においしかったです。ありがとうございました。店主もお元気でいてください」私は一気にそこまで言った。

 

「ありがとうございます。毎日来てくださるからメニューを考えるのも楽しみでしたよ。四国に戻られても体に気を付けてください。東京に来ることがあれば、寄ってくださいね。日曜日以外は夜の10時まであけてますから」

いつもは言葉少ない店主が、私の目を見て優しく微笑えみながら、そう言った。

 

私は次の言葉がみつからず、一言、

「ありがとうございます。必ず来ます」

そう言って深々と一礼し、そして、扉を出た。

 

振り返ると、店の中から店主がにっこりわらって見送っているのが窓越しに見えた。私がもう一度一礼すると店主も笑顔で一礼した。

食券を買い求めたお客が、店の中に入っていった。閉まりかける扉から「いらっしゃいませ」店主の声が小さくもれて聞こえた。

 

私は赤い“タブチ”の看板を目に焼き付け、そして、そのまま日の光の届かぬ高架下の道を高円寺駅へと歩いて行った。高円寺にきちんとお礼を告げること、別れを告げることができた。しばらくの別れだ。また来れる場所が、この高円寺に今の私にはある。そう思えることが誇りに思えた。頑張れと言ってくれる人たちに、また笑顔で会えるように私は頑張ろうと心に誓った。

 

これから第二の人生を歩み始める宮坂邦弘には、彼を支える第二の故郷ができていた。ここ高円寺での日々を胸に思いながら、彼はさらに前進することであろう。

9月のさわやかな風を感じながら歩き去る宮坂邦弘の瞳は未来への希望に輝いていた。

 

タブチ

営業時間:11時~22時

定休日:日曜日

電話番号:03-3337-4186

 

 

 

 

タブチ”おすすめポイント

安くておいしくてボリュームがある

高円寺は激戦区。安かろう、まずかろうでは通用せず、経営が難しいといわれる中で30年営業している。安定感のある味付けと量でこの安さは魅力です!

レストランで修業したこだわりの料理の数々

銀座の高級レストランから始まったというご主人が作り出す”タブチ”の料理は、味わい深い。創業時からほぼ変わらないというかなり手ごろなお値段のメニューですが、手は抜かない。この値段でできる限りの“最高の味”でだしているとのこと。

人気のカレーライス

学生~年配、男性、女性問わずに人気の定番メニューです。

普通のカレーライスはやや甘口で、子供でも食べられるようにしているとか。野菜と肉もしっかり味わえてルートの愛称も抜群!辛口はややスパイシー。

毎日食べても飽きないおいしさ

毎日通う常連さんもいるほどの人気の秘密は、毎日変わる日替わりの種類の豊富さでしょうか。メインご飯、みそ汁、小鉢、サラダもついて体喜ぶおいしいメニューです。

 

 

◆タブチ”のご主人から一言

“毎日食べるならこういう店“ “毎日来るならこういう店”

たまに行くなら高級店やおしゃれな店もいいですが、毎日食べるなら、飽きないで美味しく食べられる店がよいと思って料理を作っています。

 

 

 

 

 

 

第4話:懐かしきジャズの調べにのせて

 

「ラフロイグ、シングルをロックで」

 

由里はいつものように注文した。

淡いグレーのストライプのスーツ、ロングヘアを小奇麗に後ろでひとつにまとめていて会社帰りなのだろうということが一目でわかる。

 

高円寺駅の高架下と並行に通る道がある。若者達が屋外席でワイワイと楽しそうに飲んで食べている比較的新しい店を通り過ぎ、昔ながらの定食屋で有名な赤い看板が目印の「味楽」を通り過ぎた先にこの店「ブリキの時計」はある。

 

由里は、もともと高円寺に住んではいたが、新宿にある旅行会社に勤め始めてからは、実家を出て高円寺駅の近くのマンションに一人で住んでいる。今年で36歳になる。

 

高校時代の親友の真理絵は幼稚園の先生になり、今は結婚して子供がいる。最近では1年に1回会うぐらいか。二人は高校時代、吹奏楽部に入っていてよく一緒に帰宅した。駅前の「一口茶屋」でたい焼きをほおばったものだった。由里は英文科に進み、海外旅行を扱う旅行会社に就職した。学生時代からジャズが好きで、アメリカのニューオーリンズにジャズを聞きに行ったことがあった。それが、旅を扱う仕事をしたいと思うきっかけだったと由里はよく友人に話している。

 

 

ツアー企画から時には添乗までをこなしていて、仕事中は気が抜けない。そんな由里にとって、仕事帰り、家に帰る前にこの店でたまにお酒を飲んで帰るのが最近の楽しみだ。

 

店の前の看板に書かれた「ブリキの時計」という名前と少年とも青年ともいえぬ顔のデザインはいつ見ても心惹かれる。おそらく初めて訪れたのは25年以上前だろうと由里は思っている。小さいころにこの店に父親に連れてきてもらった記憶がわずかにある。そのことを思い出してこの店を訪れてからまだ1年足らずだが、くれば注文は〝ラフロイグ”と〝チキンホワイトグラタン”だった。

 

酒は強いほうではないが、シングルモルトのラフロイグの独特の香りと味が由里は好きだった。海の香りとも保健室のような香りともいわれる独特の香りは好みがわかれるところであり、“惚れ込むか、大嫌いになるかのどちらか”とさえ言われるほどだが、由里はラフログの味に惚れた派だったらしい。

 

由里は懐かしさあふれる店内と店に流れる音楽も好きだった。

少し暗く感じる店内は壁の色のせいだろう。使い込まれたいい色合いになっていて真新しい真っ白な壁よりも目にやさしく落ち着く。

 

店の奥には大きなウッドベースが飾ってある。楽器は違うものの、「セロ弾きのゴーシュ」の話を思い出させる。正面奥の上には巨大は木のクーラー。昭和のドラマに出てきそうな代物だが、きちんと動いているのが素晴らしい。

 

左の壁にはお酒のミニチュアボトルのコレクションが飾られていて、それもまた風情があるのである。

 

そして、何より流れている音楽が耳に心地よい。由里の好きなジャズから、オールディーズの洋楽を楽しむことができるのである。

 

ざわざわ、がちゃがちゃしていないので、音楽に耳を傾けながら、お酒を楽しむことができる。今時にない昭和の時間を味わえる貴重な空間だと由里が感じる店だった。

 

「お待たせしました」

 

50代後半ぐらいのスリムなマスターがいつものように、にこやかに言いながらグラスを2つテーブルに置いた。

 

「チキンホワイトグラタンをお願いします」

「はい」

 

マスターがカウンターに戻っていった。ほどなくトントントントンと調理の音がジャズに合わせて聞こえてくる。料理は注文を受けてから作ってくれる、家庭的な温かさがあり手作り感が由里にはたまらなく美味しく感じられた。

 

●●●

 

「ラフロイグと砂肝のからし煮」

井坂正平はきまっていつもカウンター席に座った。

ドリンクを作ったり、調理をするマスターを見ながら、ちびちびと飲むのが居心地よく感じるからだ。

井坂正平は学生時代に新潟から上京して東京の大学に通っていた。学費は親が払ってくれたが、アパート代は自分で稼がなくてはならず、4畳半の安めのアパートを借りていた。風呂はなく、同じアパートに住む男子学生と銭湯通いをしていたが、夏はとにかく暑い!帰りに涼んでいこうとクーラーのある「ブリキの時計」に仲間数人で入って飲んで帰ったことがあり、それ以来、学生仲間で時折飲みに行った。ボトル1本を数人で飲むからあまりお金に余裕のない学生の身分でもなんとか払える金額で済んだのであった。

 

大学時代に通い始めてから、その後、就職した後も井坂はたまに会社の帰りに「ブリキの時計」に飲みに立ち寄った。

卒業後は4畳半のアパートから今度は高円寺駅から徒歩10分ほどのバストイレ付きのアパートに引っ越した。再び高円寺に住まうことを決めたのはこの町の人や雰囲気が肌にあっていると思ったからだった。

 

サラリーマンとなってからは学生仲間と飲んでいた頃とは飲み方も当然変わった。会社帰りに店に一人で立ち寄り、座る場所はカウンター席に定着した。バランタインを飲むことが多かったが、ある時からラフロイグにはまった。

 

《からしのかくし味がほどよく口にひろがる。やわらかさにびっくりの砂肝のからし煮》

 

スモーキーで海藻や潮の香の特性を抱いているという独特の芳香が好きになり、ラフロイグのロックに、つまみは学生時代から変わらぬ“鳥皮の細切り”か“砂肝のからし煮”というのが常になった。

 

結婚してからしばらくは足が遠のいたが、娘がある程度の歳になると、妻は娘のことに忙しくなったこともあり、再び会社帰りにたまに飲みに来るようになった。

 

一人で音楽を友達に飲んだり、時にはマスターに愚痴ることもあった。マスターは嫌な顔もせず、それぞれのドラマを最後まで聞いてくれる。そうやって誰か聞いてくれる人がいることで、やるせない日も乗り切れたと50代半ばとなった井坂正平はあの時代を懐古することがたまにある。

 

仕事の後に新入社員の歓迎会があり、自宅のある高円寺に到着したのは23時半を過ぎていた。翌日は土曜日で仕事も休みのため、井坂正平は久しぶりに店に足を向けた。

 

金曜日の夜ということもあり、スーツ姿のカップルや、会社帰りのサラリーマンなどがゆったりと過ごしていた。

井坂はいつも座る入り口近くのカウンター席の1席に腰を下ろした。

「いつもので」とマスターに頼んだと同時に背中越しに声をかけられた。

 

 

「あれ?お父さん?」

 

振り返ると紺系のフォーマルワンピースにジャケットを羽織ったカチッとした姿の娘の由里が立っていた。

 

「今仕事帰りか?ずいぶん遅いな」

「今日は会社帰りに歓送迎会があってね。ここまで残業はないよ、さすがに」

 

由里はそう言いながら、カウンターの井坂正平の隣席に座った。

同じ町に住んでいても、由里はたまにしか実家には顔を見せない。

「なんだかできる女性みたいに見えるな。馬子にも衣装だな」

父親の正平は目を丸くして由里をしげしげと眺めた。

 

「いらしゃいませ」

と由里に挨拶するマスターに

「マスター、娘です」

「そうだったんですか。娘さんといえば、たしか昔、一度一緒にお見えになりましたよね。お待たせしました、ラフロイグです」

マスターはラフロイグのグラスと水入りのグラスとを正平の前に並べた。

 

「私も同じので。まだグラタンできますか?」

由里がすかさずオーダーする。

「大丈夫です。ラフロイグのロックとチキンホワイトグラタンですね」

24時にさしかかっていたが、マスターは問題なし!というようににこやかに答えると早速支度を始めた。

「ラフロイグを飲むのか?」

正平はまたまたびっくりして言った。

「なんかすっきりするっていうか。そこだけはお父さんに似たのかな。血は争えないわ」

残念そうに由里がおどけて言って見せた。

 

「昔、一度だけ連れて来てくれたじゃない。その時にラフロイグってお父さんが言ったのがなんか変わった名前だから、ずっと覚えてたのよね、たぶん」

 

 

《プリプリチキン、マッシュルーム、玉ねぎがホワイトソースと相性抜群!具がたっぷりマカロニなしのチキンホワイトグラタン 》

 

「ああ、あったな。あの時、あのピンクの公衆電話を10円入れてかけたいってお前はきかなくてな、かけるまで帰らないって言い張って」

「ダイヤル式の公衆電話、指で回してかけるのがなんか楽しくて。でも、どこにかけたんだろう、覚えてないわ」

 

「家にかけてたぞ、たしか。お母さんが出て、ここに2人で来たのがばれたんだよな」

 

「そうか。あの頃はまだかける先が私にはどこにもなかったのか……」

 

由里が笑ってごまかした。

「あっ、でも、この間小さい男の子とお父さんが地方から来ていて、その時にちょうどあの電話が鳴ったのでマスターが電話を取ったの。それを見ていた小さな男の子が、「パパ、あれなに?」ってお父さんに聞いたわけ。で、電話だって説明したんだけど、今はジーコンジーコンする電話なんてないもんだから、納得しなくて」

 

「まあな、最近はみんなスマホかガラ携の時代だから、よほどのことがないと公衆電話も使わないだろうし、今はすっかり、あのピンクのタイプの公衆電話は姿を消したからな」

 

「そうそう。だから、その男の子は10円入れてかけさせてもらってたんだけど、数字の番号のところに指を入れては回すのが不思議で楽しかったみたいよ」

「お前も昔はそうだったけどな」

「そうだっけ?」由里はきょとんとした顔で言った。

 

「それにしても、お父さんが今でも飲みに来てるなんて知らなかったな……」

 

「おいおい、もともと父さんが通っている店だからな」

とそこへ、「お待たせしました。グラタンはもう少しお待ちくださいね」

 

由里の飲み物と砂肝のからし煮をカウンターテーブルに置きながらマスターは笑顔で言い添えた。

「早く帰らないとお母さんさみしがってるよ」

「たまにしか帰ってこないお前と違って土日は母さん孝行してるぞ、父さんは」笑いながら軽く言い返す。

「失礼しました。また家にも遊びに行かせていただきます」

と笑いながら頭をちょこんとさげて返し、由里と正平は父娘で乾杯した。

 

店内には“Daybyday”の音楽がいつのまにかかかっていた。由里の好きな曲だった。マスターは客の好みや注文時に聞いた苦手な野菜や食べ物なども、ほぼすべて覚えていた。

 

以前に一度、由里がこの曲をかけてほしいとマスターに頼んだことがあり、以来、由里がいる間に一度はこの曲を店内で流してくれるのである。

 

マスタ-のそんな見えないやさしい心づかいが忘れられずに、ここを訪れた客は再び何度でも足を運ぶのかもしれない。

昭和世代に懐かしい、ゆっくりとお酒を楽しめる空間。

 

そして、現代の殺伐としたスピードに少し疲れた新しい世代もまた、どこか癒されるこの店でひとときを過ごしたくなるのかもしれない。ジャズに耳を傾け、お酒と手作りのつまみで過ごす心安らぐひととき、それは「ブリキの時計」がくれる魔法の時間なのである。

 

ブリキの時計

営業時間 18:00~25:00

定休日  日曜日

電話番号 03‐3314‐3266

 

*****ブリキの時計おすすめポイント!*****

アンティークな空間、お酒でくつろぐ癒しのひととき

 

■今も昭和のハイカラな雰囲気が残りどこか懐かしさを感じる店内。

入り口にある10円いれて使うピンクの電話は必見!知らない世代にはぜひ10円を入れて試してほしい!

 

■ お客様の雰囲気に合わせてマスターがその時々に選ぶ、心地よいジャズと古き良きアメリカ音楽

 

■ マスター手作りのホワイトソースと肉味噌を使ったおしゃれで美味しいメニューの数々ホワイトソースたっぷりのグラタンはひとつひとつ手作り、具もたっぷり!熱々を召し上がれ!

 

■ 開店当時から店を支えてきたやさしいマスター。しっかりと話を聞いてくれる頼りになるマスター。マスターに会うために遠くに引っ越しても折々店を訪れる常連さんも多いらしい。

 

*****「ブリキの時計」のマスターから一言*****

 

昔ほど、お酒というものを飲まなくなった気がします。もっとお酒を飲みましょう!

 

※「ブリキの時計」は昭和57年開店、2016年には35周年を迎えました

 

 

 

 

 

第3話:僕はテケ(ゴジラや)

 

「KONNICHIWA」

黒のリュックサックを背負った背の高い金髪の男性が入ってきた。

「いらっしゃいませ」

店内に響くやさしく明るい声。(おっ!今日もいい声してるな……)僕は会話に耳をすませる。

「CHOUGOUKIN ARIMASUKA?」

「超合金は今、昔のタイプは少なくなってきてるんですよ。コン・バトラーVとか、海外ですごくブームになっていて・・・」

 

説明するのはこの店「ゴジラや」の店主木澤さんだ。

ここは高円寺の高架下にある「ゴジラや」。昔のおもちゃなどを売っている店で、店主の木澤さんは、テレビにも出演している有名な鑑定士。でも、若い頃に音楽もやっていたらしく、70年代の音楽とかもすごく詳しいんだ。

 

僕の名前はテケ。ソフビ(ソフトビニール)でできた猫の人形だよ。僕の生みの親は木澤さんと奥さんの二人!2007年に生まれたんだ。以来、僕はこの「ゴジラや」のガラスケース越しに毎日、木澤さんのことを見ているんだよ。

木澤さんはたぶん猫が好きなんだと思う。まぁこれは、僕の勘だけどね。だって、冬になるとよく猫の柄のセーターを着てるんだ。いろんな柄があって、もしかしたら奥さんの手編みなのかな、なんて僕はひそかに思っているんだけど真相はまだわからない。

 

じゃあ、みんなに僕の家を紹介するね。

ここ「ゴジラや」には、床から天井までびっしりといろんなおもちゃが所狭しと並んでいる。かつて少年だった人たちが探し求めるのは特撮関係のグッズ。たとえば、すごく昔のソフビの怪獣とか、ウルトラマン、ゴジラとか。目を輝かせてショーケースを眺めるお客様の姿をよくみる。木澤さんに質問する人も、もちろんいる。木澤さんはこれまた目をきらきらさせて、どういった品なのか、いつごろのものなのかを詳しく説明するんだ。

木澤さんはそれぞれのおもちゃについて、その価値を話せるすごい人なんだよ。

1階には「ゴジラや2」という名前の飲食店がある。カレーがおいしいと評判で酒が飲める店。木澤さんがマスターとして店に立つこともあるんだって。僕はまだ連れて行ってもらったことはないんだけどね。

「ここだよ!高円寺のゴジラやさん!」

階段の下から声が聞こえた。

店は直線階段を上った2階にある。入り口を入ってきたのは母親と少年だった。

「いらっしゃいませ」木澤さんがいつものように優しい笑顔で出迎える。

「あー!鑑定団の木澤さんだ!本物だ!」木澤さんを見るなり少年は目を輝かせてさけんだ。

「すみません」申し訳なさそうに母親が謝る。

「こら、さとし!失礼でしょ」めっ!と母親が少年を叱った。

少年は「は~い」と言うと「すげー、本物だよ母さん」と店内を楽しそうに散策し始めた。

(子供は無邪気だにゃ……)

「あの、昔の怪獣のソフビっていうのはこの中にあるものですか?」

少年の母親が木澤さんに尋ねた。

「そうですね。もし、気に入ったものがあればケースを開けますよ?」

「ありがとうございます。父は昔から怪獣ものが好きで、ゴジラとかピグモンとか、いろんな怪獣を集めているんです。その父に還暦の祝いに何がほしいと聞いたら、昔の怪獣がほしいと言うんです。でも、普通のおもちゃ屋さんには現在の新しいものしか置いてないそうで、昔のものならこちらで見つかるんじゃないかと兄に言われまして」

「そうですか。ゴジラですと、こちらにいくつかありますよ。円谷系の怪獣ですと、こちらにガラモンとかキングジョーとかかなり古いものが入ってきたばかりで・・・何かお好きな怪獣があるんでしょうか?」と木澤さん。

このあと木澤さんは母親と少年さとし君に怪獣の説明をしてあげたんだよ。二人ともフンフンとすごく楽しそうに聞いていた。

こんな風に木澤さんは丁寧に説明して教えてあげる。ここゴジラやでは、毎日がそんなことの繰り返しなんだ。

 

さて、ここには少年向けだけでなく、昔のリカちゃんとか、バービーとか女の子向けの人形とかもある。

小さなおまけの品とか、レコード、ペコちゃんグッズ、薬屋さんのマスコットキャラクターグッズなんてのもある。見るだけでも楽しい小さな博物館みたいな感じの店なんだ。

最近では特撮時代を懐かしむ日本のお客様に加えて、海外からのお客様も増えていて、今日みたいに超合金ロボットを見せてほしいということが多いみたい。大人気だ!

 

木澤さんにゴジラやウルトラマンについて語らせたら話がつきることはないだろうと僕は思う。作品の内容、造形美術、登場する怪獣達、作品に登場する俳優さんたちのこと、本当に奥が深いんだ。だからおもちゃとともにその話を聞くのも楽しみにやってくる人もたくさんいる。

木澤さんは円谷、東映などに出演していた俳優さんたちとも仲がよくて、たまにお店にも遊びに来るんだよ。

みんな、貫禄というかオーラがあってただものじゃないって人目でわかる。店内にサインも飾られているんだ。

さまざまな人が訪れるこの店にもお休みがある。火曜日と水曜日。僕達おもちゃ達が羽をのばせる2日間だ。

いつもはガラスの中でじっとしていないといけないからね。

でも、この2日間は、お客様がこないからのびのびできる!僕は店の中にいる、いろんなおもちゃ達に話を聞くんだ。ここに来るまでにそれぞれのドラマがあるんだよ。

 

「私はこれまで何十年も箱の中にいたよ」そう語ってくれたのは新品みたいにすごくきれいなソフビの怪獣さん。「まだ子供だったご主人様は私のキャラクターがお気に入りだったようで、すごく大事にしてくれた。手に取るときもそっと大切そうにもち、普段は戸棚の上において眺めていたのだが、ご主人様が社会人になったころ、私は使わなくなった物と一緒に箱の中にしまわれて、そのまま押入れに入れられた。つい先日、再びダンボールから出してもらえた時には、ご主人様はすごく年をとっていてびっくりしたよ。私をとても懐かしそうに優しい目で眺めていた。当時目を輝かせて私を見ていた小さなご主人様の目を私は思い出した。だが、さようならをすることになったのだ。大切にしてくれる人がいるなら、と娘という女性が私をここに連れてきたのだよ」

「私は外に遊びに行くときにはいつも一緒だった」と語るのはウルトラマンのソフビだ。

 

「当時小学生だった私の元主人は、テレビで放映されていた「ウルトラマン」にもう夢中で、外に遊びに行くときにも、母親と出かけるときもいつも一緒だった。おかげでいろんなものを見れて楽しかったな。でも、数年するともうお役ごめんで、私はほったらかしにされた。かわいそうに思った母親は、まわりをふいてくれたが、私はそのまま戸棚の奥にしまわれ、時が過ぎた。今は、次の主人待ち。大切にしてくれる人だといいな」

「私はね、もうお人形さんとは遊ばないからって、ここにつれて来られたの。捨てるのはかわいそうだし、ここなら私をほしいという人のところに行かれるだろうからって。長いこと一緒に遊んでくれてありがとうって最後に言ってくれたのが嬉しかったわね」

そんなわけで、ここにはいろんなドラマがあるんだ。やってくるもの、去っていくもの。

店主の木澤さんはそのドラマを受け止めて、僕達をここにおいてくれている。それは木澤さんが小さい頃におもちゃを捨てられてしまったことに由来するみたいなんだ。捨てられるおもちゃ達を救ってあげたい!そんな気持ちから「ゴジラや」は始まったらしい。まさに僕達にとってヒーローみたいな存在なんだ。

以来30年、ここから旅立つおもちゃ達は「大事にしてもらうんだよ」って、優しい目で送り出されていく。

僕もいつか誰かの元にいってしまうかもしれないけど、きっとその時には木澤さんが優しく送り出してくれるはずだって信じてる。

「ゴジラや」ここは、木澤さんが作り出した僕達おもちゃ達の停留所であり、同じ気持ちを共有できる心の家なんだ。

 

ゴジラや

 

◆営業時間:14~18時

◆定休日:火曜日・水曜日(木澤氏の撮影都合により不定休あり)

◆電話番号:03-3336-3178

twitter : @Godzillaya

※おもちゃの買い取りも行なっていますのでお気軽にご相談ください

 

★店主木澤さんから皆様へ一言

円谷系、東宝系などのソフトビニール製の人形が充実していると思います。

昭和40年頃のソフトビニール製のギララ、ガラモン、ナメゴン、キングジョー、

カネゴン、ゴメス、ペギラなどの怪獣人形もあります。

まずは、皆さんに一度見ていただきたいですね。

そして、時代の流れを感じてほしいです。昔のおもちゃは、できの悪さが、良さとなっています。そんな“良さ”をぜひ飾って、味わってほしいと思います。

 

★お店のお勧めポイント

昭和のおもちゃ~平成のおもちゃまでの幅広いラインナップ。

東宝系・円谷系の怪獣関係はもちろん、調合金ロボット関係、鉄腕アトム関係、ぺこちゃん、サトちゃんなどのマスコットキャラクター系、レコードもあり、おもちゃの種類が豊富。

※昭和のおもちゃで探しているものがあれば、見つかるかもしれません。

ソフトビニール製の怪獣人形は、レジわきのショーケースにびっしりと集まって皆様をお待ちしています。今ではなかなか手に入らないような珍しい品もあり、一見の価値あり。

そしてなんといっても!

テレビ「開運!なんでも鑑定団」で長年鑑定士として登場している木澤さん本人に出会えます!

 

 

第2話:昭和の味は胸に熱く(味楽)

 

「ガラガラガラ」

田端耕造はいつものように手動扉をあけて中に入った。

「いらっしゃいませ」

いつものように親父さんの安定した明るい声が店内に響く。

田端耕造は今年で72歳、少し黒髪のまじった白髪にいつもジャケットを羽織っている。これは会社時代の癖だ。60歳で退職した後もグループ会社で数年間出向して勤務していた。サラリーマン時代の癖がぬけず、近所であろうと家の外に出るときには今もきちんとした身なりをしている。

耕造の妻の京子は5年前に亡くなった。

老後は2人で旅行に行こうというのが京子の口癖だったが、耕造はいつでも行かれるからと先延ばしにして、自宅でのんびり過ごすのを楽しんでいた。いつからか京子は体調を崩すことが多くなり、今日は具合が悪いと言ってたまに寝込むようになった。そして、5年前の冬の朝、胸が苦しいといって倒れ、救急車で運ばれた。緊急処置で意識はあったが、いくつか検査の必要があるため入院となり、京子はその夜、その病院で亡くなったのであった。

 

二人には子どもはいなかった。耕造は突然ひとりぼっちになった。

2階建てのその家は一人ではがらんとして広く大きく感じられた。

これまでは家で過ごしていた耕造は、それを境に昼間は外に行くようになった。とはいえ、地元高円寺の駅のあたりまでぷらぷらと歩いていき、どこかの店でコーヒーの1杯でも飲んで時間をつぶしていた。特にしたいことはなかった。

高円寺には商店街がいくつか存在する。高円寺純情商店街、高円寺ストリート、高円寺パル商店街などなど。

耕造も日によって違う商店街を歩くようにしていたが、暇をつぶすとなれば高円寺駅のそばの喫茶店で休むことが多かった。天気がいい日には駅前の一口茶屋で小倉たい焼きを1匹買ってベンチで食べたりもした。

ある日、高架下の隣の道を歩いていると大勢の客が、ある店の前で順番待ちする行列にでくわした。

赤い看板に黄色い大きな文字で“味楽”とありその横には白文字で中華料理と書いてある。

ちょうどおなかも空いていたし、時間はたっぷりあるので耕造にとって長時間待つのは好都合、とりあえず列の最後尾に並んだのであった。

 

表の壁の白いボードになにやらメニューが書かれていた。本日のランチ、チキンカツ、ポークハム、目玉、味付けのり。ライス、味噌汁付で、値段は500円とある。味はわからないが、これだけ並んでいるということはおいしいのだろうと耕造は思った。そこへ20代ぐらいの若者二人がやってきた。

「げっ!やっぱ並んでるよ」

「まっ、当たり前じゃない!10日は並ぶよ。仕方ないっしょ」

そういいながら、二人は耕造の後ろに並んだ。

「日替わりなんだっけ?」

「ボード見てきたら?俺は焼肉ライスかカツカレーにするかな」

「カレーっていえば、ここのマスター昔あの王貞治選手にカレーだしてたんだってな。先輩から教えてもらってさ」

王貞治……野球選手の王選手だろうか?耕造はふと若者の会話に引き込まれた。何をかくそう耕造はかつては大の巨人ファンだったのである。

「じゃあ、マスターに聞いてみるか」

そうだ聞いてほしい!耕造は心の中で会話に参加していた。

「今日は忙しいんじゃね」

「そうだな、じゃあ聞くのは次回か。残念」

二人は大学の野球部らしく、翌週の試合について話し始めた。

「1名さまどうぞ」

耕造は二人より一足早く店の中に入った。

装飾の基本は赤なのか、店内のいすも赤かった。4人がけのテーブル席が2つ、カウンターに赤いいすが並んでいて、満席だった。配置のせいなのか色合いなのか、昔ながらの中華やさんという感じがして心地よく感じた。

カウンター席に通された耕造は、先ほどの話にでてきたカレーも食べたいと思ったが、なにせ初めて見るメニューのため一瞬戸惑った。だがふと隣の客が食べている炒め野菜たっぷりのセットがおいしそうに見えた。野菜炒めライスだろうか?と感じた耕造は迷わずそれを注文していた。

「お待ちどうさま」

どんぶり茶碗に大盛のご飯、味噌汁、そして、山盛りの野菜炒め。上には大きなハムかつがのっていた。

2日分の野菜が取れそうなほどの山盛りの野菜炒めは、キャベツ、もやし、絹さや、豚肉などが入っている。

耕造は早速、野菜炒めから食べた。

「んっ!!なつかしい味だ」耕造が一番始めに感じたのは懐かしい味ということだった。

最近の中華のチェーン店で出るような洒落た味とはまた違い、その昔、若かりし頃に中華食堂で食べたようなあの味付けだった。

それぞれの野菜は、火は通っているのにしんなりせずにパリパリと歯ごたえがあり、新鮮な感じがした。味付けも胡椒がいい具合にきいていて美味しかった。味噌汁も家庭的な味がした。わかめと鰹節が絶妙で、こちらは昔妻の作ってくれた味噌汁ににていると耕造は思った。もう食べることができないと思っていた味噌汁の味に、耕造の胸は熱くなった。

カリッとあがったハムかつ、山のようにある野菜炒め、大盛りライスと味噌汁を十分味わいながら完食した。

「ごちそうさま」と耕造は席を立ち、勘定をしながらおかみさんに言った。

「おいしかったです。この店、長いんですか?」

「ありがとうございます。高円寺で52年になります」厨房の入り口からひょいと顔を出したのは自分と同じ年代とおぼしき柔和な顔立ちの男性だった。この店のマスターだ。

 

「10日なのでこれお持ちください」

差し出されたのは3枚のカード。100円引きという文字が見えた。

この店では毎月10日はこの金券がもらえるのである。それで混むのだと耕造はこのときようやくわかった。

「高円寺なんで、また来ます」

「ありがとうございました」マスターとおかみさんはにっこり笑って耕造を見送った。それが耕造が味楽に行き始めるきっかけだった。

以後、定休日以外は毎日通うようになった。

同じような常連は何人もいることも徐々にわかってきた。

男性のみならず、女性同士の客や、もちろん若者もやってくる。

懐かしい味は誰にでもある。懐かしさを感じる店がある。

ここは、昭和の味に出会える、耕造にとっては今となっては貴重な空間になっていた。

妻を亡くし、特に生きる目的もなかった耕造だったが、最近では趣味を見つけた。

朗読教室というところに通い、朗読を習っているのである。そして帰りには妻の味噌汁と同じ味のする味噌汁がのめるこの店による。その空間で、耕造はふとあの昭和の時代に戻ったような幸せな気持ちになるのである。

今、耕造には目標がある。いつか仏壇の前で妻に朗読を聞かせよう、笑われないような立派な朗読をと。

 

味楽

営業時間 11:00~21:00ぐらい

定休日 火曜日

 

◆マスターから皆さんへ

毎日お客様が来てくださることが励みです。日替わりは500円で毎日メニューが変わりますのでぜひ楽しみに食べにきてください

 

◆味楽おすすめポイント!

♪40年前から変わらぬ値段とボリューム

♪王選手も高校時代に食べていたカレーライス

♪女性と子どもにはおみやげにうまい棒付

♪マスターの野球のお話

 

 

 

 

 

第1話:熱々たいやきパワー(一口茶屋)

 

「いらっしゃいませ」

「舞衣ねぇ、クリーム!」

桜色のワンピースにベージュの半コートを着て、髪の毛を二つに結んだ幼稚園ぐらいの女の子が、店の注文窓の下からななめ上の店主のほうに向かってにこにこと注文する。

 

隣に立っているのは娘の母親。紺の上下に春のコートを羽織った清楚な身なり、肩より長い濃い茶色の髪を後ろできれいにまとめている。

「たい焼きのクリームと小倉、それからたこ焼きをお願いします」

「クリーム、小倉にたこ焼きね。ありがとうございます。たい焼きは、今ちょうど焼きたてですよ」

黄色の制服姿の60代ぐらいの店主が、はきはきとした声で、こちらもまたにこにこ笑いながら応えた。

 

母親の真理絵は、この店に通って20年になる。

この店が出来た当初は、ショートヘアの高校生だった。合唱部だった真理絵は、部活を終えた後、自宅のある高円寺駅にたどり着くのはたいてい6時過ぎ。

同じ駅に住み、同じく合唱部員の親友由里とともに帰ってくるのが常であった。

ある冬の日、何か食べたいと思ったときに、高架下の商店街入り口にある店の「たい焼き」の文字が2人の目に留まった。二人とも言わずとも気持ちは同じだった。「食べよう!」制服にコート姿の女子高校生二人は迷わず店へと向うと、カスタードクリームのたい焼きを注文した。

夫婦で切り盛りしているその店は、商店街の入り口の角地にちょこんとたっていた。

ウィンドー越しに“たい焼き”と“たこ焼き”を作る姿が客にも見える。

優しい笑顔の奥さんが器用に“たい焼き”型に生地を流し込み、あんこをすっすっと置いていく。その合間に焼き途中のたい焼きの焼き具合を確認している。

黄色地に店のロゴが入った制服姿の主人が、焼きあがったばかりのたい焼きをひょいと取り上げ、2つ紙に包んだ。

 

店主夫婦は年の頃40代、店でみせる二人の流れ作業は息があっていて、絶妙な二人三脚をみせる。

「出来立てだから、熱々ですよ。はいどうぞ」にこにこと店主が二人にたい焼きの包みを手渡した。

作りたてのたい焼きを二人は、はふはふ言いながら、ほおばった。ぱりっとした薄皮になめらかな熱々のクリーム、冷え切っていた体が温まっていくのを感じた。これが真理絵とこの店のたい焼きとの出会いだった。

その後も、真理絵は部活の帰りに由里とたい焼きを、時折買って食べるようになった。

あまりおこずかいを持っていない高校生二人にとっては、手ごろな値段で小腹もみたされる上、帰り道に歩きながら食べられるのがよかった。

楽しかった高校時代はあっという間に終わり、真理絵は短大へと進んだ。

理科系を目指していた由里とは進路は別れた。真理絵は子供が好きで目指していたのは幼稚園の先生だった。

 

 

将来に向かって学ぶ毎日。

そして、1年後、迎えた幼稚園の実習期間。

実際に幼稚園でアシスタントとして入り現場で学ぶ、子供達は無邪気で元気で、一緒に走り回ることも日常茶飯事、なかなかハードで、子供と過ごす時間は楽しいながらも、やはり1日の終わりには疲れてぐったりしていた。

そんな真理絵の楽しみが、この店のたい焼きを食べながら家に帰ることだった。

店に行くと、何も言わずとも「いらっしゃいませ。いつものですか?」と店主が聞いてくれるようになっていた。

「はい」

真理絵は高校時代から変わらずカスタードクリームのたい焼きを買っていた。

親友の由里と二人で食べたその味を食べると、高校時代の「夢をかなえてやるぞ!」という希望に満ちた自分に戻れるような気がした。カスタードクリームはなめらかで甘くとろりとしたクリームが口の中にすっと消えていく。疲れた体にエネルギーが浸透していくようだった。

 

幼稚園への就職が決まったとき、真理絵はこの店に立ち寄った。

「いつものですね」

「ええ。わたし、幼稚園に就職が決まったんです!」

真理絵の口から勝手に言葉がでていた。なぜかこの店の夫婦には知ってもらいたいと思ったのである。

「それは、よかったですね」主人が顔をくちゃっとさせて満面の笑みを浮かべて祝福する。

「あなた、とても優しそうだから、きっと素敵な先生になりますね。孫ができたら、その幼稚園に通えるといいわね」と奥さんも笑顔で言った。

「ありがとうございます。ずっと、たい焼きパワーをもらってました」

「今日は祝い鯛ですよ。私たちからの気持ちです。どうぞ」

店主が紙に包んだたい焼きを真理絵にそっと渡した。

たい焼きの温かさが手に伝わる。出来立ての熱々だった。

「あの……いいんですか」

「今日は特別ですからね」奥さんがにっこり笑って応えた。

真理絵は、嬉しさがこみ上げてきた。店の夫婦の温かさにふれ、真理絵はがんばっていける!そう思った。

 

あれから15年が過ぎた。

真理絵は幼稚園で先生をする中で、恋をして、結婚した。

子供ができたのを機に、幼稚園は辞めた。子供のために今度は時間を費やしたいとおもったからだ。

結婚した今もなお、真理絵は高円寺の実家にたまに顔をだす、もちろん5歳になる娘の舞衣とともに。

そんなときには必ずあの店に立ち寄る。

「いらっしゃい」

今も変わらず、店主夫婦があたたかく人を迎えている。この店を訪れる客達は、熱々のおいしい“たい焼き”だけでなく、この店主夫婦の温かさにも会いたくなるのだろう。

今日もまた、高円寺の高架下に温かい声が響く。

「出来立てですから、熱々ですよ」

 

 

一口茶屋

営業時間:11:00~21:30

定休日:水曜日

 

◆おすすめポイント!

♪ぱりっと香ばしい薄皮のたい焼き

♪甘さ控えめ、北海道産小豆使用のプレミアムたい焼き“小倉”

♪なめらかなクリームのプレミアムたい焼き“カスタードクリーム”

♪女性に人気!クリームチーズとの相性抜群!プレミアムたい焼き“小倉&チーズ”

 

◆店長から皆さんへ

お客様の「おいしい」という言葉がなによりうれしいです!

これからも孫の花嫁姿、ひ孫を見るまでがんばり続けます